起業の失敗を回避する!創業者が活用すべきシンプルな手段
創業しても予想に反して軌道に乗らないことも
創業する際に、誰もが順風満帆に事業を軌道に乗せられる訳ではありません。売上高がなかなか計上できなかったり、得意先や販路の開拓ができなかったりして、事業が立ちいかなくなることだってありえるのです。
そのような時の対処方法としては、「創業資金を十分に確保する」、「副収入を確保する」、「再就職先を確保しておく」などの逃げ道を用意しておくことに越したことはありません。ただし、このような後ろ向きな対策の他にも、全く別の視点から、起業時の販売不振リスクを大幅に減らす意外な方法もあるのです。
創業リスクを減らす「承継」という手段
近年、経営者の高齢化に伴い日本全体の企業数は減少しつつあり、やむなく廃業する企業も増えつつあります。中小企業が廃業する理由としては様々ありますが、事業を継続したい気持ちはあるものの後継者がいないことでやむを得ず事業をたたむという経営者も少なくありません。
そこで創業者が目をつけるべきは、このような後継者不足で事業経営を断念せざるをえない事業を承継することです。この点について国が示している「事業承継ガイドライン」においても、事業承継における「創業との連携」として次のように述べられています。
(1)創業との連携
現在、多くの市区町村が雇用の拡大や地域経済の活性化・成長・発展等を目的として積極的に創業支援に取り組んでいる。一方、必ずしも業況が悪くないにも関わらず、後継者不在により廃業を余儀なくされる小規模事業者が多数存在する。このため、創業希望者と後継者不在の小規模事業者をマッチングさせることによって、経営資源の有効活用に加え、地域の創業率を向上させ、中小企業の減少に歯止めをかけることが可能となる。
具体的には、先に述べた「後継者人材バンク」を活用して、起業家情報を有する市区町村及び創業支援機関と各地の事業引継ぎ支援センターが連携を深めることで、地域経済の活性化に大きく貢献することが期待される。
【出典:「事業承継ガイドライン」P83 (平成28年12月中小企業庁)】
つまり、廃業する決定を下した中小企業であっても、業績悪化や資金不足で事業をたたむわけではなく、事業を継いでくれる後継者がいないがためにやむなく優良事業をストップせざるを得ない企業もあるのです。そこで、これらの優良事業の後継者の座に収まり事業を継承することで、創業者は事業開始後のハードルを少しでも低くできるのです。
後継者人材バンクを活用する
では、後継者として事業承継をするにはどのようにすれば良いでしょうか。もちろん、創業者自身の人脈を活用して承継を希望する経営者を探すことが考えられます。ただ、人脈やネットワークを持たない創業者にとってハードルが高いと感じるかもしれません。でも諦めることなかれ。実はもっと簡単に承継希望の企業を探し当てる方法もあります。
平成23年度から後継者不足に悩む中小企業などに対して、事業承継を支援するための組織として事業引継ぎ支援センターが各地に設置されています。例えば、福岡県においては、福岡市博多区にある福岡商工会議所ビルに「福岡県事業引継ぎ支援センター」が開設されています。
【福岡商工会議所の地図】
そして福岡事業引継ぎ支援センターには、様々な事業承継に関する支援策が用意されていますが、その中に後継者人材バンクという制度があります。この人材バンクとは、後継者を探している会社や個人事業主の事業引継を支援するため、引継ぎ希望者の登録を受け付けています。
この人材バンクは、後継者不在で困っている小規模事業者(主として個人事業主)と創業を考えている起業家をマッチングし、中小企業の後継者問題の解決と創業促進を同時に図ることを狙いとしています。
(出典:「福岡県後継者人材バンク登録の手引き」から抜粋)
後継者人材バンクのメリット&デメリット
創業者がこの人材バンクに登録するかどうかは、メリット&デメリットを踏まえて検討しましょう。以下にそのメリットとデメリットを簡単に説明します。
メリット
これから起業する創業者にとって、最も気をつけるべきリスクの一つが売上(販売)が十分にたたずに、ジリ貧となること。当初の事業計画や考え通りに行くとは限らず、鳴かず飛ばずで事業を断念せざるをえない状況に追い込まれてしまうことも考えられます。創業後に相当期間に売上が上がらなければ、追加投資や販売促進への予算も思うように投入できず、負のスパイラルに陥りかねません。
その点で、すでに事業実績のある事業者の後継者となり、これまでに築いた得意先を承継することで、売上不振で倒産するリスクを減らすことができるかもしれません。さらに、取引業者との関係、熟練した従業員、店舗等の経営資源(ブランド、経営ノウハウ)も承継することができます。
また、事業経験が豊富な前経営者からのアドバイスを受けながら経営の舵取りをすることができる点も大きな利点と言えるでしょう。
デメリット
販売不振で倒産するリスクを減らすことができる一方で、既存事業を承継することは、前経営者のこれまで築いてきた方針や方法を前提としなければならなりません。また、経営者のみならず、引継ぐものは、企業文化や風土、従業員との人間関係なども対象となり、それらも受け入れて行かなければなりません。ゼロからの創業と比べると、自分の思い通りに経営ができないといった点でフラストレーションが溜まることも考えられます。
さらに、承継する事業に負債などがある場合にはその負債も引き継いで行かなければならない点も考慮が必要です。
まとめ
以上が、創業者が考えるべき「事業承継という選択肢」についてでした。いかがでしたか。創業時に後継者として事業を行うといった選択をすることで、既存事業の顧客基盤やブランドなどの優位性を手に入れることができます。むろん、プラスの資産に目が行きがちですが、負債などのマイナス資産も引き継がなければないことにも留意が必要です。