創業時に赤字が出たら絶対知っておきたい税金知識

会社設立時から知っておくべき税務知識

会社設立手順と注意

欠損金の繰越控除

会社を設立しても、売上が確実に上がり黒字が続く保証はどこにもありません。また、ゼロからの創業の場合、会社設立当初はなかなか得意先、取引先も見つからずに、創業赤字になることも珍しくありません。そのような時でもご安心ください。法人税では、欠損金の繰越控除という便利な制度が設けられていて、創業当初の赤字も繰越ができます。

欠損金の繰越控除制度(俗に「クリケツ」などと言われます。)とは、厳密に言うと、下記の通りとなります。

(欠損金の繰越控除制度)

確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度で、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、翌事業年度に繰り越し、その各事業年度の所得金額に一定の割合を乗じた金額を損金に算入できるという制度

簡単言うと、法人で青色申告していれば、9年まで赤字を繰越していけますということです。極端に言うと、会社設立の創業赤字でも、9年後の黒字と相殺することも可能になるのです。

大企業に制限も

とても便利な制度ですが、注意点もあります。実は、この繰越欠損金については平成27年度の税制改正で、中小法人等以外の大法人(資本金1億円超の普通法人等)の控除限度額の段階的な引下げや、新設法人の特例などが設定されました。

中小法人等以外の大法人、つまりかなり大きな企業については、平成27年4月1日以後の事業年度開始の日に応じて、所得金額の50%から65%まで控除制限が設けられました。

でもご安心ください。上記はあくまで大企業のお話です。いわゆる中小企業のことである中小法人等(資本金1億円以下の普通法人や公益法人など)については、所得金額の全額を上限に損金算入でき、新設法人についても、設立の日から7年を経過する日までの期間内に属する各事業年度については、中小法人と同様に、所得金額の全額が控除限度額とされています。

つまり、新設法人に対する特例については、資本金基準が設けられていないため、大法人でも適用可能となります。

新設法人とは、中小法人等以外の法人のうち、資本金5億円以上の大法人の100%子会社等でない法人が該当します。
ここで、例えば資本金10億円の大法人に完全支配されている新設法人は、上記の要件に該当してしまうため、新設法人の特例対象にはなりません。

資本金3億円の法人に完全支配されている新設法人については、その新設法人の資本金が5億円超の大法人であっても、特例対象となります。なお、特例対象となった大法人(大企業)が株式市場等に上場した場合には、上場日以後に終了する事業年度では新設法人の特例は適用できず、控除制限が適用されることになります。

繰越期間も10年に延長へ

さらにうれしいのが繰越期間の延長が予定されていることです。

平成28年度税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は現行の9年から10年とされます。

10年まで赤字を繰越しできるとなると青色申告しないわけにはいかないですね。

これに伴い、欠損金の繰越控除制度の適用に係る帳簿書類の保存期間や、法人税の欠損金額に係る更正の期間制限なども10年に延長されます。